1夜漬けは逆効果 〜徹夜は「酔っ払い」と同じ脳になりますよ〜

睡眠と生活

ーー 要約 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

  • 19時間の覚醒 = 酩酊状態と同程度の脳の状態
  • 寝不足は前頭葉、扁桃体、視床下部、海馬に幅広く影響が出る
  • 記憶は睡眠中に整理整頓されている

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 中間テスト、期末テスト、中学・高校時代の苦い思い出をお持ちではありませんか?定期試験のために部活が1週間お休み、早めに帰宅したのになぜかやる気が出ない。親に“勉強やりなさ〜い”と言われ、「今やろうと思ってたのに〜やる気なくした・・・」なんて言い訳をしていませんでしたか?その結果、テスト前日になってテスト範囲の半分も終わっていない。もう寝る時間を削って丸暗記するしかない、と覚悟を決めてコーヒーやエナジードリンクを買い込み、戦闘モードへ。

そして試験中に眠くなり、答案用紙によだれが……。

私も一夜漬けでなんとか赤点を回避していました。高校1年まではなんとかなっていたのですが、高校2年になると試験範囲が終わらない、全然覚えられない、そもそも理解できない。限界を感じて諦めたことを思い出します。

今回は、その一夜漬けが本当に有効なのかを検証します。

◯ 19時間起きた脳は、酩酊状態と同じ

 徹夜のあとは脳の機能が低下することがわかっています。そして、なかなか衝撃的な報告があります。19時間起きている人の脳のパフォーマンスは、酩酊状態(血中アルコール0.1%程度)と同程度というのです。朝7時に起きたとすれば、深夜2時にはもう出来上がっている計算になります。つまり一夜漬けとは酔っ払った状態で暗記に挑み、酔っ払った状態で試験を受けにいく作業だということです。試験会場にお酒を持ち込む人はいませんが、寝ずに行くのは実質それに近いと言えます。

これは試験前でなくても、おすすめできない状態ですね。徹夜明けに車を運転する、大事な会議に出る、資格試験を受ける。どれも「酔ったまま挑む」に近いと考えると、なかなか恐ろしい話です。しかも酔っているときと違って、寝不足の自分は「自分が鈍っている」ことに気づきにくい。ここがいちばん厄介な点です。

◯ 睡眠不足が脳のあちこちを止めていく

 もう少し詳しく見ていくと、睡眠不足は脳のさまざまな部位に影響します。

前頭葉では、注意力、集中力、論理的な思考が低下します。応用問題を解く力が落ちるということです。丸暗記でしのぐつもりでも、そもそも読解や計算でつまづいてしまいます。

扁桃体がコントロールしている感情の制御も難しくなります。不安やイライラ感、抑うつ状態の原因になると言われています。試験前にやたら不安になるのは、性格ではなく寝ていないせいかもしれません。

視床下部では食欲中枢が麻痺します。高カロリーの食べ物が欲しくなり、食欲そのものも増加します。深夜の勉強中にカップ麺やお菓子に手が伸びるのは、意志の弱さだけが原因ではなかったわけです。

そして極めつけが海馬です。記憶の中枢であるこの部位について体積の縮小や、それにともなって新しい記憶が困難になるという報告もあるそうです。記憶するために寝ずに頑張っているのに、その頑張りが記憶の中枢を弱らせている。なんとも皮肉な話です。

しかもこれは試験の一夜だけの話ではありません。受験期に何ヶ月も睡眠を削り続ける生活は、いちばん頭を使いたい時期に、いちばん頭を鈍らせる選択になりかねません。

◯ 睡眠は脳のハードディスクを整理する時間

 記憶と睡眠はどう関係しているのでしょうか?現代は情報があふれています。人間はそのすべてを記憶することはできません。覚えようとしている内容以外にも、日々膨大な情報が流れ込んできます。睡眠中は無意識に記憶の取捨選択が行われていると言われています。

イメージとしては、スマートフォンやパソコンのハードディスクの整理です。不要なファイルを捨て、必要なものをフォルダに分け容量を正常な状態に戻す、あの作業です。人間も同じように脳というハードディスクを睡眠中に整理整頓していると考えられています。そうであるなら答えは明らかです。睡眠は記憶にとって欠かせないプロセスだということになります。

覚えた内容を棚にしまう時間を与えないまま朝を迎えれば、机の上に資料を広げっぱなしで試験に臨むようなもの。どこに何があるのか自分でもわからない状態です。一夜漬けで覚えたことが試験の翌週にはきれいさっぱり消えているのも、これで説明がつきます。棚に入れる工程を飛ばしているので、そもそも保管されていないのです。テストが終わった瞬間に空っぽになる知識は、整理整頓された記憶ではないため記憶の定着ができない1つの理由です。

◯ 理想の暗記勉強法はこれです!

 というわけで、定期テスト攻略法をご提案します。

  1. 範囲を暗記する(丸暗記ではなく理解することで記憶を定着させるのがベスト)
  2. 記憶が脳の棚に整理されていく様子をイメージしながら十分に睡眠をとる
  3. 朝起きたら記憶されているか、自分の記憶の引き出しに入っているかをチェックする
  4. 記憶の不足分を朝学校に行く前に補う
  5. 試験に挑む(寝不足ではない状態で・・)

ポイントは2から3です。寝る前に詰め込んだ内容が朝の時点でどれだけ残っているかを確認します。ここで抜けを見つけて再度記憶を埋めれば驚くほど点数U Pが期待できると思います。今までの皆さんの一夜漬けとの違いは順番を意識するだけです。「覚える→試験」ではなく、「覚える→寝る→確認→試験」。間に睡眠を1回挟むだけで、脳の状態はまるで変わります。

しかも、この方法には副産物があります。試験当日の頭がはっきりしていることです。覚えた量が同じなら、鈍った脳より冴えた脳のほうがテストの点数は確実に上がると思います。暗記量で1割負けても思考力で2割取り返せるなら、そちらのほうが得ですよね!

以前お話ししたカフェインの話も思い出してください。夜のエナジードリンクは、眠気を消しているのではなく先送りしているだけです。試験中にその請求書(眠気)が届いてしまっては目も当てられません。この方法で学年10番以内は保証できませんが、赤点回避なら余裕で可能なのではないでしょうか?

◯ まとめ

 試験前の一夜漬けは記憶にとっても脳のパフォーマンスにとっても逆効果です。

  • 19時間の覚醒は、酩酊状態と同程度の脳の状態
  • 寝不足は前頭葉、扁桃体、視床下部、海馬に幅広く影響が出る
  • 記憶は睡眠中に整理整頓されている

だからこそ、試験前日こそ寝てください。削るべきは睡眠ではありません。テストで良い成績を取るのにも睡眠が大きく関係している、ちょっとびっくりですよね。受験生のお子さんが夜中まで机に向かっているご家庭では、「頑張ってるね」の代わりに「記憶の定着のために、そろそろ寝なさい」と声をかけてあげてください。それが科学的根拠に基づいた1番の応援かもしれません。

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