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要約
ベンゾジアゼピン系睡眠薬内服を回避せよ
オレキシンは日本人が発見した眠り関連ホルモン
デェビゴ、ベルソムラ(オレキシン受容体拮抗薬)を第一選択
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眠れない夜は誰にも訪れます。眠れないと夜が長く〜長く感じ、色々妄想してしまいますよね。楽しい妄想なら良いのですが、ネガティブな妄想もしてしまいます。理由は様々、家族の心配事、仕事での悩み事、恋愛のお悩み・・いろいろです。不眠に対しては、まず生活習慣や睡眠リズムを整えることが非常に非常に大切です。しかし家族の面倒、仕事のトラブルなど日々の忙しさから上手に睡眠リズムを整えることができる方は少ないのが現状です。サクッとスッキリ、眠りたいと思うのは至極当然な人間の欲求です。
そこで昭和の時代から使用されているのが睡眠薬です。今まではベンゾジアゼピン系睡眠薬が最も一般的に使用されてきました。ご使用された経験がある方もおられるでしょうか?マニアックなお話になりますが、ベンゾジアゼピン系薬剤は中枢神経系の活性を抑制することで睡眠を誘導します。抑制系神経伝達物質(GABA受容体作用薬)の作用増強により鎮静や抗不安効果を発現します。超短時間型(速攻で効果が発現、消失半減期が2〜4時間:ハルシオン®︎等)、短時間型(6-10時間:レンドルミン®︎やリスミー®︎等)、中間型(12-24時間:サイレース®︎やロヒプノール®︎、ネルボン®︎、ユーロジン®︎等)、長時間型(24時間以上:ドラール®︎等)に分類されていました。しかし、これらのベンゾジアゼピン睡眠薬には①依存性があり②筋弛緩作用③記憶の健忘作用があるという報告がここ10年ぐらいの間で問題となっています。①依存性がありということは、使用が癖になって内服休止が難しい患者さんが多いということです。②筋弛緩作用というのは夜間の転倒への影響です。例えば高齢者が夜トイレに起きて歩こうとした時、寝ぼけている影響もありますが自分が想定しているほど下肢に力が入らず転倒し大腿骨骨折をされるケースが認められます。治療するには手術が必要です。高齢者が動けず手術までベットで安静に刺激の少ない状況となると・・・お元気で活動的だったおじいちゃま・おばあちゃまが認知症を発症してしまうケースも多く報告されています。転ばない予防と早期の手術治療が元気なお年寄りを維持するために、現代の日本では最も重要なのかもしれません。③記憶の健忘作用とは字のごとく特に高齢者において忘れてしまう、認知機能低下を示すことです。
睡眠をつかさどる物質として最近ではメラトニンとオレキシンが注目されています。メラトニンは睡眠作用、オレキシンは覚醒作用があリます。メラトニンは体内時計を調整して睡眠を助けます。副作用が少ない(依存性や耐性が低く)のですが、即効性も低いため海外ではサプリとして薬局で販売もされているようです。日本ではメラトニン受容体作動薬(ロゼレム®︎)として流通しています。オレキシンは参考文献でも取り上げさせていただいた筑波大の柳沢先生と櫻井先生らがアメリカ大学研究時代に発見されたものです。これはメチャメチャすごいことで鼻高々に海外の方々に自慢していいぐらいです。私は全く関係ないのですが・・・同じ日本人として・・ふふふ・・。

オレキシンは覚醒を促進する神経伝達物質です。そのため睡眠にはオレキシン受容体拮抗薬を用いて覚醒を抑制し睡眠へと導きます。副作用は少なく(薬の飲み始めに悪夢みる事が稀にあり)、依存性や耐性も少ないため不眠症の方への第一選択薬として使用が急速に増加しています。お薬としては、ベルソムラ®︎やディビゴ®︎がよく聞かれるかと思います。一般的にはベルソムラ®︎はゆっくり効果が発現して長時間効果があると言われています。中途覚醒(夜中起きてしまう)に困っている患者さんには有効な傾向がある一方、効果がすぐに感じられない事や朝起きにくいと感じる事があります。一説によるとベルソムラ®︎はオレキシン受容体の80%程度を占拠することで効果発現が始まると言われており、そのため効果発現がゆっくりである可能性があります。内服の工夫としては、ベルソムラ®︎を予定入眠時間の1〜2時間前に内服、量を調節することで上手に睡眠を獲得されている方も多いようです。そんな不便さを改善させたのが、その後に発売されたディビゴ®︎です。ベルソムラ®︎と比較にて催眠効果発現が速やかであり、催眠効果の残存も少ないと言われています。さらに2025?には新しいオレキシン受容体拮抗薬の発売があるようで医療はどんどん進歩していきますね!
研究者の皆様、ありがとうございます!


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