ーー 要約 ーーーーーーーーーーーーーー
・閉塞型・中枢型・混合型がある。
・その大多数が閉塞型=オーサス(OSAS)
・3つの原因(舌を支える筋力の低下、体重増加による気道の狭窄、生まれ持った骨格)
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睡眠時無呼吸症候群が世間に知られるきっかけは、バス運転手の居眠り事故や新幹線の居眠り走行の報道だったと記憶しています(記憶違いだったらすみません)。昭和の時代に眠っている最中に呼吸が止まっていると想像した人がどれだけいたでしょうか。「寝ているのに、まったく眠れていない」そんな状態が本当にあると知ったのは、いつ頃だったでしょうか。しかも厄介なのは、眠っているのに覚醒が繰り返され、体としてはまったく休めていないという点です。布団に入っていた時間は8時間、でも中身はスカスカ。そんなことが起きるとは、当時は考えもしませんでした。
今回は、この病気の正体と、なぜ年を重ねると起こるのかを整理します。
◯ ペンションの仮眠室で見た父の呼吸!
私自身にも忘れられない場面があります。学生の頃、父と深夜バスのスキーツアーに参加した時です。明け方にペンションへ到着し大部屋で仮眠をとっていると、隣で寝ている父の息が止まっていました。数秒どころではありません。驚いて見ているうちに周りのツアー客の視線がこちらに集まってきます。心配と恥ずかしさと、いたたまれなさが同時に来る、あの感覚が今でもはっきり覚えています。当時は“鼾(いびき)がうるさい人”としか思っていませんでしたが、あれは立派な睡眠時無呼吸症候群の症状でした。
そして本人は翌朝けろっとしています。呼吸が止まっていた記憶などありません。この病気のいちばん厄介なところは、当事者だけが気づけないという点にあります。気づくのはいつも隣で寝ている家族です。居眠り事故の報道が続いたとき、多くの人が“本人の気の緩み”だと思っていました。でも夜のあいだ何度も呼吸が止まって起こされていたのなら、話はまるで変わってきます。眠っていないのですから、日中に眠くなるのは当然なのです。本人が決して決して悪くないのです。

◯ 睡眠時無呼吸症候群の三つのタイプ
閉塞型は、文字どおり気道が塞がるタイプです。舌が後ろへ落ち込むことにより、空気の通り道を物理的に閉じてしまいます。
中枢型は、まったく別の仕組みです。気道は開いているのに、脳から“呼吸せよ”という信号が途絶えてしまう。気道の管が詰まっているのではなく、司令室が黙ってしまうイメージです。チェーンストークス呼吸や不整脈を合併しているケースが臨床では多い印象です。
混合型は、その両方が混在するタイプです。数%ほど存在すると言われており、軌道の詰まりと信号の途絶えが、同じ夜のなかで入れ替わりに起こります。
数で言えば中枢型はごく少数、大多数は閉塞型です。この閉塞性睡眠時無呼吸症候群を、英語の頭文字からOSAS(Obstructive Sleep Apnea Syndrome)と呼びます。読み方は“オーサス“、会話でサラッと”オーサスですね“と言えると、ちょっと専門家っぽく聞こえます。オーサス、オーサス、ぜひ覚えて帰ってください。名前がつくと皆の共通認識となり”ただの鼾(いびき)“だったものが、対処できる治療できる相手に変わります。
◯ “20代の頃はこんなことなかったのに“の理由
睡眠時無呼吸検査の結果を説明すると、患者さんからよく同じ言葉が返ってきます。
“20代の頃は、呼吸が止まるなんてなかったのに、なんでこんなことに……”
不思議に思いませんか。同じ体、同じ喉なのに、ある年齢から急に息が止まり始める。これには理由が3つあります。
第一に、舌を支える筋肉の緊張低下です。 加齢とともにこの筋肉が衰えると、舌根部が口咽頭へ落ち込み気道が塞がります。しかも人間が眠るときの姿勢は、一番ラクな仰向けが7〜8割と言われています。仰向けは舌がもっとも落ち込みやすい体勢、つまり私たちは毎晩いちばん気道が詰まりやすい姿勢を自分から選んでいるわけです。起きているあいだは筋肉が舌を支えているので何も起きません。力が抜けた夜の瞬間にだけ症状が出る、だから本人が自覚できないのです。
第二に、体重の増加です。 首まわりに肉がつくと、外側だけでなく内側にもつきます。気道はその分だけ細くなり、舌の落ち込みが効いてきます。しかも舌の太る=脂肪を蓄えるってご存知でしたか?見た目にはっきり太っていなくても、内側は着々と狭くなっていきます。「昔からいびきはかいていたけど、最近やたらうるさいらしい」という変化は、この数キロが効いていることが少なくありません。皆さんの中で20代の頃と同じ体重の方、何人おられるのでしょうか?私はだいぶ体重が増えました。
第三に、顔と下顎の骨格です。 アジア人はいわゆる“ひらたい顔族”(なんだかそういう映画作品がありましたよね)です。もともと上気道が狭い骨格をしているため、舌根の落ち込みの影響がより強く出てしまいます。生まれつきの条件なので、これは努力ではどうにもなりません。逆に言えば、見るからに太っているわけでもない細身の方がオーサスと診断されることがあるのは、この骨格の要素があるからです。“太っていないから自分は大丈夫”とは言い切れないのが、この病気の油断できないところです。
◯ 3つの原因を、身も蓋もなくまとめると
要するに、こういうことです。
年をとって、太って、もともと骨格が狭い。
だから無呼吸になる。
……ちょっとひどい言い方ですね。でも、自分でコントロールできるものが何かを考えると、この整理は役に立ちます。骨格は変えられません。加齢も止められません。残るのは体重です。三つのうち唯一、自分で運命を変えられるのが体重の調整だという事実は、覚えておいて損はありません。
「20代の頃はこんなことなかったのに」という言葉の答えも、ここにあります。20代の頃は、筋肉が元気で、体重も軽かった。骨格という土台は当時から狭かったけれど、あとの二つが助けてくれていたのです。年月とともにその二つが抜けていき、隠れていた条件が表に出てきた。それが今のあなたの無呼吸です。やっぱり歳はとりたくないものですが、加齢は世界人類全員に平等に訪れます。皆さんが素敵に年齢を重ねられることを心から願っています。

◯ まとめ
睡眠時無呼吸症候群とは?
・閉塞型・中枢型・混合型がある。
・その大多数が閉塞型=オーサス(OSAS)
・3つの原因(舌を支える筋力の低下、体重増加による気道の狭窄、生まれ持った骨格)
大事なのは、これが「だらしなさ」や「気の緩み」ではなく、体の構造と経年劣化の話だという点です。あのペンションで感じた恥ずかしさは、今思えば必要のないものでした。ご家族を大切に思えば、恥ずかしがって放置している場合ではありません。お隣で鼾の(いびき)の音の大きさではなく、“止まっている時間”に耳を澄ませてみてください。数十秒の静寂が繰り返されているなら、それは専門医受診のサインです。
次回は、OSAS(オーサス)が体にどんな影響を与えるのか、そしてどんな治療があるのかをご紹介します。


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