お酒は「寝つき」だけを買って「眠りの質」を売る取引です! 

睡眠と生活

ーー 要約 ーーーーーーーーーーーーーー

・深いN3が減り、レム睡眠も減る

・利尿作用とアセトアルデヒドで夜中に目が覚める

・筋肉の弛緩と粘膜のむくみで、いびき・無呼吸がやってくる

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 お酒は仲間との楽しい時間を作り出す魔法の薬です。美味しい食事に、美味しい日本酒、いやワイン?やっぱりビール、最高です。……と語っておいて申し訳ないのですが、実は私、お酒が飲めません。 最近はノンアルコール飲料の種類が増えたおかげで、私もお酒の席をしっかり満喫させてもらっています。ありがたい時代になりました。さて今回は、そのお酒と睡眠の関係です。飲む方にはあまり嬉しくない話が続きますが、最後にちゃんと逃げ道も用意していますのでご安心ください。

◯ お酒は寝つきを良くするのは・・本当です

 まずお酒の効果を否定するつもりはありません。アルコールには催眠作用があります。脳に作用して神経の活動を抑制し、眠気を感じさせる。寝つきが一時的に良くなるのは、このためです。

「飲んだ日はすぐ眠れる」という実感は、気のせいではないわけです。

問題はここから先。寝つきは良くなるけれど眠りの質は悪化すると言われています。睡眠の入口、入眠だけが快適で睡眠の中身が悪い取引を行なっていることになっています。

◯ 深い眠りも、夢を見る眠りも減ってしまう

 具体的に何が起きているのか解説させていただきますね。アルコールによって、深いノンレム睡眠であるN3が不足します。以前の記事でノンレム睡眠にはN1〜N3の深さがあり、成長ホルモン(成長や皮膚や臓器のメンテナンス作用)が分泌されるN3が削られるわけです。

さらにレム睡眠も減少します。脳の整理に関わるとされる時間帯まで短くなってしまいます(実際レム睡眠が何を行なっているかは、まだまだ明確にはわかっていません)。つまりお酒は、眠りの深いところと、脳の整理整頓の時間帯の両方を同時に削っています。飲酒後睡眠時間は確保できているのに朝どうにも回復していない、疲れが残っている気がするのはこれらが理由かもしれません。

睡眠は長さだけでなく中身で決まる、という話を何度かしてきました。お酒は睡眠の長さは確保できても中身がスカスカになる典型例です。8時間布団にいたという事実は、8時間分の回復を保証してくれるわけではないということです。

◯ お酒が夜中の目覚めを誘発する2つの理由

 お酒により夜間の中途覚醒が増加します。理由は2つです。

①お酒による利尿作用です。

 夜間の尿が増え、トイレに行きたくて(尿意)目が覚めます。夜間頻尿の記事でも触れましたが、人間(動物)は飲んだ分だけ尿は増えますし、アルコールにも利尿の働きがあります。

②アセトアルデヒドです。

 アルコールが分解されてできるこの物質には、覚醒作用があり交感神経を刺激します。交感神経が興奮すると人間は起きてしまいます。眠るに誘う神経は副交感神経でしたね!交感神経が戦いの神経ですので、危険を察知し戦闘モードとなるため当然覚醒方向へ向かいます。

つまり、お酒は眠らせておいて数時間後に叩き起こす。しかも本人はなぜ目が覚めたのかわからない。飲んだ夜の3時、妙にはっきり目が覚めた経験がある方は、これが原因かもしれません。

しかも一度起きてしまうと、そこから寝つけないことも多い。前半でラクをした分を、後半でしっかり返済させられる仕組みになっているのかもしれません。

◯ いびきと無呼吸

 このブログの本題にも当然つながります。アルコールには、舌や咽頭・喉頭(のど)の筋肉を弛緩させる作用があります。加えて、上気道の粘膜をむくませる作用もあります。筋肉がゆるんで舌が落ち込み、粘膜がむくんで通り道が狭くなる。これは以前お伝えした、いびきと睡眠時無呼吸の発生条件そのものです。

お酒を飲んで眠っている同僚や、彼氏・彼女をじっくり観察してみてください。いつもは聞こえないいびきをかいていませんか。

あれっ、息が止まっている人も……?

それって睡眠時無呼吸症候群の入口かもしれません。ふだんは静かな人が飲んだ夜だけ轟音になるのは体質が変わったのではなく、その晩だけ気道が細くなっているからです。さらに、もともと軽いいびきがある方にとっては、お酒が症状を一段押し上げる引き金になります。睡眠時無呼吸症候群の治療で真っ先に「お酒を控えて」と言われるのは、こういう理由です。

◯ お酒は夕食の時間まで

 では、どうすればいいのか?結論はシンプルです。

お酒は夕食の時間までに終える。

理由は、アルコールが代謝されるまでに3〜4時間必要だからです。逆算すると、0時に床に入る方は、20〜21時までに飲酒を終わらせる必要があります。お酒が大好きな方には物足りない話でしょうが、睡眠オタクの私としては当然のお願いということになります。そして量にも目安があります。アルコール20g程度に止めることが大切です。ビールなら500ml、ワインなら2杯程度です。いわゆる2ドリンクまで、というラインですね。

「そうは言っても……」という声、わかります・わかっています。飲めない私が言うと説得力がないことも、重々承知しています。ちなみに、夕食で飲み終えるという形は、以前お話しした「夕食は就寝4時間前まで」ともきれいに重なります。食事とお酒を同じ時間でおしまいにすることが睡眠にとって単純で理想的なのです。

◯ 週1回の「ご褒美DAY」はアリ

 そこで提案です。週に1回くらいは、ご褒美DAYをつくってください。その日は満足がいくまで、夜のお酒を思いきり楽しんでいい日です。仲間と家族とお一人で大満足するまでお酒を楽しんでください。ただしその日の睡眠が不十分になることは覚悟してください。睡眠にとって何が起きるかを十分理解した上で、楽しい時間を過ごすことを優先する必要があるということです。

 理解して飲むお酒と「寝つきが良くなるから」と毎晩続けるお酒とでは、意味がまるで違います。毎晩の習慣にしてしまうと、質の悪い眠りが標準になってしまいます。そうなると、疲れが取れないのはお酒のせいだと気づけません。むしろ「疲れているから今夜も一杯」と、原因のほうへ手が伸びてしまいます。試しに、1週間だけお酒をやめてみてください。最初の数日は寝つきが悪く感じるかもしれませんが、朝の目覚めが変わるかどうかは、自分の体で確かめるのがいちばん早い方法です。

◯ まとめ

お酒は、寝つき(入眠)を買う代わりに、眠りの質を手放す取引です。

  • 深いN3が減り、レム睡眠も減る
  • 利尿作用とアセトアルデヒドで夜中に目が覚める
  • 筋肉の弛緩と粘膜のむくみで、いびき・無呼吸を招く

だからこそ、お酒は夕食まで、量は20gまでにしてください。0時就寝なら20〜21時が締め切りです。

そして週1回のご褒美DAYは大いに楽しんでください。ただし翌朝の寝起きの悪さは、昨夜の自分からの請求書だと思って受け取りましょう。もし眠れないから飲む、が続いているなら順番が逆になっているかもしれません。お酒は眠るための道具ではなく、起きている間を楽しむためのものですよ!

 

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