睡眠時無呼吸を放っておくと何がまずい?(閉塞性睡眠時無呼吸症候群の体に及ぼす影響 その1) 〜心臓が毎晩400mダッシュしています〜

睡眠と病気

ーー 要約 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・呼吸ができずに低酸素状態   = 「酸素が入ってこない」問題

・心臓や肺のある胸腔が陰圧状態 = 「入ってこないのに吸い込もうとする」問題

・心臓がミス連発、心房細動などの不整脈を発生させる

・認知症との因果関係があるかも?

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 “低酸素”、“胸腔が陰圧”と並ぶと、それだけで読む気が失せますよね。詳しい解説は別の項目に用意しますので、息が詰まった方はそちらを先にどうぞお読みください。

ざっくり言えば・・・

1つ目は「酸素が入ってこない」問題

2つ目は「入ってこないのに吸い込もうとする」問題です。

“いびきがうるさいだけでしょ”、“息が止まっても、また空気が吸えるのだから平気でしょ〜!”

オーサス(OSAS)を指摘された方から聞く反応の典型です。しかし放置した先で困るのは、喉(気道)だけではなく心臓であり、脳であり、全身の細胞です。困った顔をしているのは隣で寝ている家族ではなく、実は本人の全ての内臓をはじめとする細胞・・・・“あなたのすべて”です。

 今回は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が体にどのような影響を与えているかを解説したいと思います。難しい言葉も出てきますが、詰まったら得意の聞き流し戦法でなんとか乗り越えてください。要点だけ持ち帰っていただければ十分です。

◯ 全身への悪影響の正体は、たった2つ

 オーサスが体に及ぼす影響は、突き詰めると2つの現象から始まります。

① 呼吸ができずに低酸素状態になること
② 空気の入口が閉じたまま吸おうとするため、心臓や肺のある胸腔が陰圧になること

“低酸素”、“胸腔が陰圧”と並ぶと、それだけで読む気が失せますよね。詳しい解説は別の項目に用意しますので、息が詰まった方はそちらを先にどうぞお読みください。

ざっくり言えば・・・

1つ目は「酸素が入ってこない」問題

2つ目は「入ってこないのに吸い込もうとする」問題です。

前者は体を酸欠にし、後者は胸の中を強い陰圧で引っぱります。どちらも喉(気道)の狭さから始まって全身に波及していきます。ここでは1つ目の問題、“低酸素” に絞って、体の中で何が起きているかを追いかけます。

◯ プールの息止め競争を1晩中やっている!!

 低酸素の何がまずいのか。ここは皆さんが1度は経験している体験で思い出すのが早いと思います。子どもの頃、学校のプール、市民プールに友達と一緒に行って、潜水などで息止め競争をしませんでしたか?友達に負けまいと我慢して、我慢して、もう限界というところまで粘る。浮かび上がった瞬間、ゼエゼエ、ハアハアと息も絶え絶え・・・心臓は跳ね上がり、しばらく動けません。

 オーサス(OSAS)の方の体では、息止め競争に近いことが一晩中繰り返し起きています。身体への影響で言えばその何倍も大変な事態が起こっています。プールでの息止め競争は自分の意思でやめられますが、睡眠中の無呼吸は違います。本人は眠っているので、やめることも、加減することも、途中で“もういいや”と降りることもできません。しかも睡眠は1晩中、数時間続きます。息止め競争が1回や2回ではなく、それが延々と繰り返される訳です。翌朝、本人はいつもどおりの顔で起きてきますが、体のほうは徹夜明けのような相当体力を消耗した状態です。

 身体に酸素が不足すると脳も心臓も肝臓も肺も腎臓も筋肉も、全身の細胞がいっせいに緊急事態宣言を出します。“酸素をよこせ〜〜!!”という悲鳴が、全身から発生します。細胞は酸素がなければ働けません。どこか1箇所が我慢すれば済む話ではなく、全部署から同時に苦情が来る。会社にたとえるなら、全フロアで一斉に停電と全職員が食中毒で倒れたような状態?が発生したことになります。

◯ 責任感の強い心臓が、頑張りすぎてミス連発!!

 全身の悲鳴に真っ先に応えるのが心臓です。なんて責任感の強いキャプテンみたいな存在なんでしょうか?酸素を積んだ血液を1つ1つの細胞へ届けようと、ドキドキドキドキと回転数を上げます。感覚としては400mダッシュを全力で走ったときと同じくらいです。心臓は文句も言わず、律儀に働き続けます。しかし、無理に頑張りすぎた結果どうなるか?仕事でも残業続きで疲れてくるとミスが増えますよね。心臓もまったく同じです。無理を重ねた末に、ミス——つまり不整脈を連発するようになります。

 なかでも無呼吸と心房細動との因果関係は強いと言われています。もちろん心房細動の原因は一つではなく、背景はさまざまです。それでも“なぜか不整脈が出るようになった”という方の背景に、夜のあいだの低酸素が隠れていることが多数認められます。ちなみに心房細動は不整脈の1つで、すぐには生死に関係するものではないのですが、心臓のリズムが崩れ心臓の中に血栓(血の塊)を作りやすくしてしまいます。時々、その血栓が心臓から旅を始めてしまうと、各臓器の血管に蓋をして梗塞(脳梗塞や腎梗塞等)を起こしてしまいます。ちょっと専門的ですので、これらも他のお話で解説できればと思います。

 想像してみてください。日中あなたが400mを全力で走ることってありますか?学生時代の部活のトレーニングで経験があるかないか・・・それを心臓は、あなたが眠っている間に何十回とやらされている。休息を取るための睡眠時間が、いちばん過酷なトレーニングの時間になっているわけです。健診で不整脈を指摘され、心臓の検査は一通り受けたけれど原因がはっきりしない。そんな経験がある方は、夜の呼吸という原因を考慮していないのかもしれません。心臓だけを見ていても、犯人が喉(気道)にいる場合は見つからないからです。昼間の心電図では何も出ないのに原因は夜にある。ここがオーサス(OSAS)の見つけにくいところです。

◯ 酸素不足でいちばん困るのは脳です!

 酸素が足りないときに最も影響を受ける臓器は脳だと言われています。脳の怖い病気といえば、脳梗塞、くも膜下出血、脳腫瘍あたりが思い浮かびます。ただ、これらとオーサス(OSAS)が直接強く結びつくという明確な報告はないかと思います。当然細かい研究等はたくさんありますが・・・。しかしながら、認知症との因果関係については、一般常識となる大規模研究はありませんがいくつか報告があります。毎晩、酸素の足りない状態を繰り返している脳に、何も起きないほうが不自然だとも言えますよね。

 脳は体のなかでも特に酸素を大量に使う臓器です。しかも一度失われた神経細胞は、筋肉のように鍛え直せばよいというわけにはいきません。何十年という単位でこれが続いたらどうなるのか。想像すると、少し背筋が寒くなります。細胞レベル、ミトコンドリアやミクログリアといったレベルで何が起きているのか?そこはこれから解明されていく領域なのだと思います。仕組みがはっきりわかれば、治療の意味合いも変わってくるはずです。世界の研究者の皆さんに大いに期待したいところです(すでにわかってきている事実があれば、勉強不足で申し訳ありません。ご存じの方はぜひ教えてください)。

◯ まとめ

 オーサス(OSAS)の本当の怖さは、いびきの音でも日中の眠気だけでもありません。低酸素と胸腔の陰圧という二つの現象が、毎晩、体の内側を静かに削っていくところにあります。低酸素は全身に緊急事態宣言を出させ、心臓を400mダッシュ状態にして不整脈を招きます。なかでも心房細動との関連は強いと言われます。そして酸素不足の影響を最も受ける脳では、認知症との関連が報告されています。

 ここまで読んでいただいて、“うちの家族、いびきがうるさいだけだと思っていた”と感じた方もいるかもしれません。音は入口にすぎません。その奥で心臓と脳が何をさせられているか、というのが今回のお話です。つまり無呼吸は、“喉(気道)の問題”ではなく“全身の問題”です。不整脈を指摘された、血圧が上がってきた、そういえば夜中に何度もトイレに起きる・・・・そんな心当たりがあるなら原因の1つに夜の無呼吸の存在を疑う時なのかもしれません。逆に言えば、夜の呼吸を整えることは喉だけでなく心臓や脳への負担を減らすことにつながります。たかが“いびき”で片づけないだけの理由が、ここにあります!

 今回は盛りだくさんになりましたので、二つめの「胸腔の陰圧」が引き起こすこと、高血圧や夜間頻尿との関係は、次の項目でご紹介します。夜中に何度もトイレに起きるのは年のせいだと思っている方こそ、次回をお読みください。

 

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