寝不足だと体の「戦士たち」がサボる〜免疫とワクチンと睡眠の話〜 

睡眠と病気

ーー 要約 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  • 睡眠不足でNK細胞などの免疫細胞の活性が低下する
  • ワクチンの効果も、6時間未満の睡眠では下がるという報告がある
  • がん細胞の排除にも免疫が関わっており、睡眠不足はその制御を弱める可能性がある
  • ただし数字は慎重に。情報は自分で確かめる姿勢が大切

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 少し肌寒くなってくると風邪をひきやすい時期です。乾燥するとインフルエンザなどの感染症も流行してきます。予防接種を受けたのに、なんだか効いている気がしない。そんな心当たりはありませんか。

体調管理といえば手洗い、うがい、栄養バランスはもちろん大切ですが、そこに睡眠を並べている方は意外と少ないかもしれません。今回は睡眠と免疫の関係を少し解説したいと思います。慎重に扱わなければいけない話題も出てきますので、そのあたりも正直にお伝えします。

◯ 免疫細胞という体の中の戦士

 免疫細胞とは、体の中にバイ菌が入ってきたときに戦ってくれる戦士たちです。この中にNK細胞(ナチュラルキラー細胞)という細胞があります。名前がかっこいいですね。日々パトロールをして異常な細胞や侵入者を見つけては攻撃してくれる存在です。そして、ここからが本題です。睡眠不足になると、このNK細胞の活性が低下することが知られています。活性が低下するとどうなるか?戦士たち(免疫細胞)が行動を起こしにくくなります。活動するためのスイッチが押されないまま、戦力が眠ったままになってしまう。これが免疫力の低下につながると言われています。

兵隊の数は変わっていないのに誰も動かない、そう考えるとイメージしやすいでしょうか?装備も人員もあるのに、指令が届かない軍隊のようなものです。“忙しい時期に限って風邪をひく”という経験、ありませんか。人混みが増えるからだと思いがちですが、その時期はたいてい睡眠も削れています。守りが薄くなったところに、ちょうど敵がやってくるわけです。

◯ ワクチンの効果も落ちてしまう

 もう一つ見過ごせない話があります。ワクチンの効果が睡眠不足によって低下してしまうようです。フランスの研究では6時間未満の睡眠によって、ワクチン接種後の免疫反応(つまりワクチンの効果)が低下するという報告があるそうです。ワクチンは、体に「この相手と戦う準備をしておいて」と教える仕組みです。その教育を受け取る側の体が寝不足で朦朧としていたら、学習効率が落ちるのも無理ないのかもしれません。

予防接種を受ける前後はしっかり眠ることが必要です。せっかく時間とお金をかけてワクチン接種を行うのですから、効果を最大限に受け取れる状態で臨みたいところです。インフルエンザの予防接種を“仕事帰りに駆け込んで、その夜も残業”というスケジュールで受けている方は、少し予定を組み直す価値があるかもしれません。

◯ がんと睡眠:ここからは慎重に・・・

 続いて、がん細胞との関係です。この分野には多くの報告がありますが、偏った意見も混ざっているのが現状です。 ご自身でしっかりがんと睡眠の関係性の報告を正しい情報か?間違った情報か?判定する必要があることを念頭に置きながら読んでくださいね!

その上で一般に言われていることを紹介します。

一説によれば、人間の体には1日あたり数千個のがん細胞(正常ではない細胞)が発生していると言われています。それでも全員ががんになるわけではないのは何故か?もともと備わっている免疫機能によって、がん細胞が排除されているからです。パトロール中の戦士たちが、その都度処理してくれているわけですね。しかし、睡眠不足によって免疫細胞の活性が低下すると、そのがん細胞を排除する制御機構の能力が低下してしまうと言われています。

具体的な数字としては、こんな報告があります。

  • 乳がん  :睡眠6時間未満の人は、8年で発症リスクが1.62倍
  • 前立腺がん:睡眠6時間未満の人は、7年で発症リスクが2.08倍

なかなかインパクトのある数字です。

◯ 数字だけを鵜呑みにしない

 ただし、ここで大事なお願いがあります。くれぐれも過剰な効果報告ではないかを毎回疑ってください。さまざまなニュースや文献を読んで、ご自身で判断することが大切です。最近ご使用されているA Iに意見を求めるのも1つの方法です。こうした数字は、条件や対象者によって変わります。

“寝不足だから必ずがんになる”という話でもなければ、

“よく寝ていれば絶対に大丈夫”という話でもありません。

医療の情報は断言する記事ほど威勢がよく、読んでいて気持ちがいいものです。しかし気持ち良さと正確さは別物です。私自身、この連載では“〜と言われています”という書き方を多用しています。これは逃げではなく、わかっていることとわかっていないことを区別したいからです。その上で確かな事は、睡眠不足が免疫の働きにとって不利であるという方向性です。細かい数字を信じるかどうかは別として、この方向性を疑う理由はありません。

そして、この手の話を怖がりすぎるのも考えものです。“昨日3時間しか寝られなかった”と不安になって、その心配でまた眠れなくなる。それでは本末転倒です。1日や2日の寝不足を悔やむより、平均して6時間を切らない生活に寄せていくほうがずっと現実的でしょう!

◯ 体調が悪い日は、堂々と眠る事

 最後はいちばん実用的な結論です。風邪など体調が悪いときは暖かくしてゆっくりする、そして睡眠を十分に確保する。それによって体力の回復を目指す。免疫機能を高め、戦士たちに存分に活躍してもらう。これが非常に大切です。熱があるのに出社する、鼻をすすりながら残業する。これらは、かつて昭和の時代は美徳とされましたが、自分の戦士たち(免疫細胞)に“戦うな”と命じているようなものです。治癒までに時間がかかり、結局は長く休むことになります。

そして、しんどい日に眠くなるのは怠けではありません。体が“今は修理の時間だ”と言っているだけです。素直に従いましょう。前回、成長ホルモンには疲労回復や臓器の修復に関わる働きがあるとお伝えしました。深く眠っているあいだに、体は修理と防衛を同時に進めています。布団の中でじっとしている時間は、何もしていない時間ではないのです。

◯ まとめ

  • 睡眠不足でNK細胞などの免疫細胞の活性が低下する
  • ワクチンの効果も、6時間未満の睡眠では下がるという報告がある
  • がん細胞の排除にも免疫が関わっており、睡眠不足はその制御を弱める可能性がある
  • ただし数字は慎重に。情報は自分で確かめる姿勢が大切

手洗いもうがいも大事ですが、眠ることも立派な感染対策です。今夜あと1時間早く寝ることは、明日の自分への予防接種のようなものかもしれません。

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コメント

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